【罰則有り】 外国人の雇い入れ時は、事業主にはハローワークへの外国人雇用状況の届出義務があります!

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■この記事のポイント
⚫︎事業主は外国人を雇い入れたり離職させたりした際に、その情報をハローワークに届け出る必要があります。
⚫︎届け出を怠ったり虚偽の内容を申告した場合、最大30万円の罰金や刑罰が科される可能性があります。
⚫︎不法就労を防ぐために、外国人の在留資格を確認し、在留資格で許可された範囲内でのみ労働させることが求められています。
⚫︎事業主は常に適切な雇用管理を行い、法的責任のリスクを回避することが重要です。

外国人を雇用について

 インバウンドで外国人観光客が増加し、接客業などで外国人が貴重な人材となる場合が増加しています。

 また、日本の文化が認識され、円安で日本の滞在コストが抑えられてきるので、多くの外国人留学生が来日しています。

 外国人留学生の多くは、定められた範囲内での就労が可能ですが、事業主側が法的手続きを怠ると、事業主に刑罰が科されます。

外国人が在留資格の範囲内で能力を十分に発揮しながら適正に就労できるよう、事業主の方が守らなければならないルールや配慮していただきたい事項があります。内容をご理解の上、適正な外国人雇用をお願いいたします。

事業主の義務1. 雇入れ•離職時の届け

 外国人の雇入れと離職の際は、その氏名、在留資格などをハローワークに届けなければなりません。※届出期限:雇い入れた日の翌月の10日

 外国人雇用状況の届け出を提出していなかった場合、30万円以下の罰金の対象になります(労働施策推進法48条1項2号、同28条1項)。未提出の場合だけでなく、虚偽の内容を申告することも不法行為にあたります。
※当然ですが罰金刑は前科(犯罪歴)が付きます。

 必要な書類は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
 ハローワークへ直接行って提出する必要はなく、インターネットを経由して提出することも可能です。
 届出に当たり、雇い入れる外国人の在留資格を確認する事で、不法就労の防止にもつながります。

 ハローワークでは、届出を基に、雇用管理の改善に向けた事業主の方への助言や指導、離職した外国人への再就職支援を行います。

事業主の義務2. 適切な雇用管理

 事業主が遵守すべき法令や、努めるべき雇用管理の内容を盛り込んだ「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」が、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律に基づき定められています。

 この指針に沿って、職場環境の改善や再就職の支援に取り組んでください。

こんな場合は不法就労です!

1. 不法滞在者・被退去強制者を働かせた場合

 日本へ密入国をした人や、在留期限が切れたのに滞在し続けている人など、本来では日本にいてはならない外国人を働かせた場合、事業主に責任が問われます。

 例えば、事業主が適切にハローワークへの届出を怠ったなどの在留資格を公的機関へ届出確認をしなかったことが原因で、後に在留カードの内容が虚偽だった場合には、事業主は不法就労助長罪に問われ、事業主は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(入管法第73条の2)が科されます。

2. 就労が認められていない在留資格の人を働かせた場合

 日本で働くことが認められていない在留資格を持つ人を、働かせた事業主が責任に問われます。
 例えば、「留学」や「短期滞在」の在留資格などが該当します。

※ただし、「留学」や「家族滞在」など一部の在留資格では、事前に入国管理局に「資格外活動の許可」(入管法19条の2)を得ていれば、定められた範囲内で就労できます。

3. 在留資格で許可された範囲を超えて働かせた場合

 雇い入れた外国人が、在留資格で認められた範囲労働時間を超えて労働させた場合に、事業主が責任に問われます。

 例えば、一般的な就労ビザと言われる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ人が、レジ打ちや飲食店のホールなど、いわゆる単純労働と考えられる業務に従事することは認められていません。

 在留資格で許可された範囲を超えて働いたと判断され、違法になります。

 ただし、②の例外にあたる、「【留学】や【家族滞在】の在留資格を持ち、【資格外活動の許可】を得た人」であったとしても、週に28時間以上働いた場合は、資格の範囲外の労働に従事したと判断され違法となります。
 資格外活動の許可は「原則週28時間以内」と定められているからです。

 労働が許可された28時間というのは、1事業所あたりの労働時間ではありません。
 外国人が複数の事業所で雇われてい
る場合は、その全ての企業での労働時間を合算して週28時間以内になるようにしないといけません。
 資格外活動の許可を得た外国人を雇用する場合は、他社と掛け持ちをしていないか、している場合は週の勤務時間が28時間以内におさまっているか、を意識して業務に就いてもらわなくてはなりません。

つまり、ハローワークに届出を済ますことで、他での就労などの状況がわかり、事業主は法的責任のリスクを回避できるのです。


まとめ

 事業主はリスクを回避し事業継続をしていくもので、めんどう、知らなかった…ではすまされません。
 事件に巻き込まれた場合は、全従業員だけでなく全ての取引先への社会的な信頼も失墜します。

最低限の法的なルールを守ることで、事業をリスクから守り従業員に安心して働いてもらうことを第一に考え、正しく事業継続をしましょう。

参考リンク

  1. 厚生労働省 外国人雇用状況の届出について
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html
     
  2. 厚生労働省 外国人を雇用する事業主の皆さまへ 「外国人雇用はルールを守って適正に」:
    https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/001100538.pdf
  • 作成:2024年6月4日
  • 著者:能登 健
  • 出典元:厚生労働省、警察庁
  • 画像:ばくたそ、Copilot(生成AIによる画像作成)
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    消費者問題と、デジタル分野に詳しい、大阪で活躍するファイナンシャルプランナー
     
    主にスマホ料金相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
    不当な契約があれば解約の上、行政の消費者相談窓口を案内している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。

    社会課題を解決するために、問題と向き合い深掘りし、組織を横断して、時には政府に意見し、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)