マルチ商法の勧誘目的で、アルバイトなどの職場への侵入が増えています!

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◾️この記事のポイント
※この記事は、マルチ商法の勧誘目的でアルバイトなどの職場への侵入が増えていることについて述べています。
⚫︎この問題は、勧誘された従業員など職場の中で人間関係が気まずくなったり、勧誘が怖くなって仕事に来れなくなるなど、職場の人材配置に大きな影響を及ぼします。
⚫︎実際にあった被害事例も紹介されています。
⚫︎また、職場でマルチ商法の勧誘を受けた事後の対処法として、消費者ホットラインへ相談して消費者被害の報告とその後の対応の相談をすることが提案されています。
⚫︎さらに、マルチ商法(連鎖販売取引)の問題点も述べられており、勧誘目的を告げない“自由に決める権利を与えず”、“断っても再勧誘する”行為は許されるものではありません。
⚫︎最後に、嫌悪感が増大しますが、ただ嫌うだけではなく断る手法を身につけておくことも必要です。

 アルバイトやパートの複数人が同じ作業などをする職場に、他の従業員に対してマルチ商法の勧誘を目的として仕事を始める(侵入)事案が増えています。

 この問題の被害の大きさは、勧誘された従業員など職場の中で人間関係が気まずくなったり、勧誘が怖くなって仕事に来れなくなるなど、職場の人材配置に大きな影響を及ぼします。

実際にあった被害事例

※実際にあった被害事案を当事者から直接ヒアリングしています。

 職場本来の目的以外のために仕事に就くことは、社会通念上重大な問題があり、ほとんどの会社の就業規則や業務規定にて、会社が認めていない営業や勧誘は厳しく禁止されており、懲戒対象になっています。ですが、マルチ商法の勧誘目的で入ってきた人材は、そんなことはお構いなしです。

 当人は本業の上達に関心がなく、勧誘目的ですから仕事は要領を得て早く覚えることはありません。もっぱら、勧誘のために周囲の人の連絡先を入手をしようとします。

 新しく配属された新人は、何かの折に食事やサプリメントのこと勉強していると自慢げに話してきます。
 誘い文句は決まっているようです。

  • 自宅で料理教室をしている
  • ビーガン食のレストランをいくつも知っている
  • 食を学ぶことで人生が好転した
  • Nブランドのサプリメントで、病気知らずになった

※「Nブランドの…」のマルチ商法の商材名の時だけは、周囲を警戒して自信なさげの小さめの声になります。

勧誘目的を告げずに勧誘ターデットを誘い出す

 自宅での無料の料理教室にてビーガン食をふるまう事を提案してきます。これが女性なら少し興味を持つ場合があるのです。勝手に悪用されているビーガンを実践している人からしたら、冒涜するような酷い話です。

 そして、実際に自宅に案内されると、本当にここに住んでいるのかと疑うような古民家で、料理を作ってふるまってくれます。その後にA社の勧誘があるのです。勧誘が目的だった事を告げずに誘い出すことは“勧誘目的不告知”になります。

 その場では軽く断るのですが、この話を聞いてから考えてほしいと“再勧誘”と“退去妨害”をします。

 勧誘を受けた当事者からの印象では、まるでマインドコントロールをされている人が話をしているかのような奇妙さがあったと感想を聞いています。

 そして、何食わぬ顔で職場に出勤をしてくるのです。勧誘された側は当然ですが会いたくありません。このように職場の人間関係を破壊して自己の利益だけを求めていきます。

 職場の人間関係に支障をきたし、組織がむしまれていき、事業継続すらままならなくなる可能性もあるのです。

職場でマルチ商法の勧誘を受けた事後の対処法

 このような事が発生した場合は、まず消費者ホットラインへ相談して消費者被害の報告とその後の対応の相談をしてください。

 その上で、職場で情報共有するなり、会社の内部通報制度を活用して、職場の改善活動に協力するようにしましょう。

 民法の特別法である特定商取引法では、マルチ商法は連鎖販売取引と呼ばれ、勧誘目的不告知、再勧誘、退去妨害は禁止行為になっています。禁止行為ですから行政処分の対象です。消費者庁の特定商取引法違反の情報提供フォームでは、当事者以外でも情報提供が可能です。
 また節度のない禁止行為に及んだ場合は、刑事罰の対象になります。最寄り警察署に退去妨害で被害届を出せば、刑事事件として扱われます。

マルチ商法(連鎖販売取引)の問題点

 日本国憲法では“職業選択の自由”を保障しており、マルチ商法(連鎖販売取引)を営むことは問題ありません。ですが消費者トラブルが特に多いケースに対して禁止行為を定めている特定商取引法に抵触しないようにする必要があります。“他人に権利を侵害されてはならない”と憲法では保障されています。

 勧誘目的を告げない“自由に決める権利を与えず”、“断っても再勧誘する”行為は、決して許されるものではありません。

 A社内では商品のカテゴリー別にブランド名称を付けており、サプリメントのNやスキンケア関係のAなどのように、詳しく実物を見るまではA社の商品でマルチ商法(連鎖販売取引)が関わってる事がわかりません。勧誘の手段でA社と説明せずに商品を勧める会員もよくいてます。
 同社は、2022年10月14日〜2023年4年13日までの6ヶ月間、勧誘、申込受付及び契約締結の禁止を、消費者庁から業務改善命令として行政処分を受けたばかりです
 A社の日本法人の公式サイトで発表されている“全国の会員の再教育プログラムや各種対策”は、末端の会員は法令遵守を軽んじて、モラルに欠ける行動を継続しています。つまり、再発する事を意味しています。


まとめ

 勧誘が目的である事を告げずに勧誘するために接触してくることは、そのアプローチ方法自体が騙す行為です。
 嫌悪感が増大しますが、ただ嫌うだけではなく断る手法を身につけておくことも必要です。
 このような勧誘などの消費者被害にあった場合は、消費者ホットライン(局番なしの188)へ相談してください。住民サービスとして地域の消費者行政の消費生活相談員が相談に応じ、助言やあっせんを受けることができます。

参考リンク

  • 作成:2023年8月17日
  • 文:能登健
  • 出典元:消費者庁 特定商取引法ガイド
  • 画像:ばくたそ
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    大阪で活躍する消費者問題と、デジタル分野に詳しいファイナンシャルプランナー
     
    主にスマホ乗換相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。
    課題を解決するために、問題を深掘りし、組織を横断して、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)