相談したら負け? 不当なことでも小さな事で消費者相談窓口を利用して、行政の支援を受けるなんて、大丈夫なの?
■この記事のポイント
不動産の賃貸契約における消費者の権利と相談窓口について書かれたものです。
① 賃貸マンションの管理人が駐輪契約を履行しない場合、消費者は契約の解除や損害賠償を求めることができる。
② 賃貸マンションの共有部分の所有者は、敷地全体を所有するオーナーか、分譲マンションの専有部分を所有するオーナーと管理会社のどちらかである。どちらにも連絡することができる。
③ 消費者契約法は、事業者と消費者の間の不当な契約や不当条項を無効とする特別法である。民法よりも優先して適用される。
④ 消費者は、全国の都道府県に設置された消費者相談窓口や消費者ホットラインに相談することができる。相談は無料で、助言や斡旋などの支援を受けることができる。
⑤ 消費者は、小さなことでも相談することで、悪質な事業者に対抗することができる。声を上げないで泣き寝入りするのは、事業者側の思うツボである。
※不動産の集合住宅(いわゆるマンション)の賃貸などに時々相談がある内容です。くらしの中で住む場所は誰にでも必要ですから、一度は耳にしたことがある内容だと思いますので、最後まで読んでください。
駐輪契約済みステッカーを再発行しない悪質管理人
Nさん(男性)は、賃貸マンションに住んでいます。賃貸マンションの敷地内の駐輪場に自転車を駐輪するために、自転車の駐輪費用として年間1,800円支払う契約をしています。
つまり、Nさんは自転車の駐輪契約にて、自転車をマンション敷地内の駐輪場に駐輪する権利があり、マンションの事業者側にはNさんの契約した自転車台数を駐輪させる義務が生じている状態です。
マンションの管理人は契約している自転車を特別なステッカーの有無で判別して、契約外の自転車は敷地内に不法に駐輪されたものとして、扱い処分しています。
契約後しばらくしてから、Nさんはマンションの駐輪契約済みのステッカーを貼った自転車が盗難に遭いました。
Nさんは日常の移動手段で自転車を使っているため、すぐに代わりの自転車を用意して、管理人に自転車が盗まれたので、新しい自転車に貼るための駐輪契約済みステッカーの再発行を依頼しました。
しかし、管理人はステッカーは既に渡しているので再発行はできないと断られました。
その後しだいにNさんは、マンションで何かあっても管理人の対応に不信感を持つようになり、何も管理人に相談しなくなり、新しい自転車は室内に入れるようになりました。
管理人という優越的な地位を濫用した契約違反(債務不履行)と、それで消費者側に不利益が押し付けられ、いわゆる泣き寝入り状態になっています。
こんなことを放置していては精神衛生上好ましくありませんし、家計にもよくありません。
賃貸マンションの共有部分の所有者は?
しばらくして、Nさんはお付き合いされてるKさん(女性)を向かい入れて同居するにあたり、管理人と会話が成り立たなくて困っていることをKさんに伝えました。Kさんの自転車も駐輪する予定だからです。
そこで、Kさんは管理人は契約を守ってくれないので、マンションのオーナーへ連絡する事を考えました。
しかし、賃貸マンションの場合、①敷地全てを1人のオーナーが所有している場合と、②分譲マンションの1部屋の専有部分をそれぞれ個別のオーナーが所有していて、共有部分は管理会社が管理している2つのケースがあります。
①であれば、駐輪契約も同じオーナーなので、管理人の怠慢による債務不履行となり、対応を怠っていた期間の駐輪費用の返却が管理人の責任において発生します。
②は①とオーナーか、共有部分を管理する管理会社が管理人の勝手な判断の報告を受けていませんが、駐輪契約済みなので①と同じく対応を怠っていた期間の駐輪費用の返却が管理会社の責任において発生します。
そもそも消費者側は、トラブル時に契約書を読み返しているのか?
契約書に基づいて駐輪場を使う権利を得て、その利用料金を支払っています。
契約内容では、駐輪契約済みステッカーの再交付は一切しないのか、一年に一度なのか、適宜なのかなどの契約内容を再確認してから、管理人と話をする必要があります。
★契約書を読み解く自信がない、理解できないなどがあれば、理解できたと装って契約を締結している消費者側にも落ち度があります。
★契約書を交わして両者が同じ内容を記載したものを保有しているならば、まずは契約内容を隅々まで理解することに努めましょう。
不動産賃貸に多い消費者契約法の不当条項
Nさんはマンション敷地内の駐輪契約を締結しており、自転車を駐輪する権利があります。ですが管理人はステッカーが悪用される事を想定して、理由の内容を問わず契約済みステッカーの再発行を拒否して、自転車を駐輪する契約の権利を妨害しています。
不動産の事業者側の管理人と、入居者の消費者側のNさんとでは、関連知識や交渉などに圧倒的な格差が生じます。消費者契約法では事業者と消費者のあらゆる契約を対象とし、不当な契約や、契約内容が一方的に事業者側に有利で消費者側に不利益をもたらす不当条項を無効としています。
消費者契約は民法ではなく消費者契約法が優先して適用される
消費者契約法は、民法の一般的な判断とはことなり、民法より優先して適用される特別法になっています。またそれらの法的な構造的な仕組みを補うために、全国の都道府県に消費者相談窓口が設置されています。
⚫︎民法の範囲ですが、消費者側であれば相談は消費者行政に相談する権利があります。相談は助言や斡旋など弱者である消費者側を支援する仕組みになっています。
◎相談先は、消費者ホットライン:全国共通番号188(いやや番)です。住民サービスですから居住している自治体の消費者相談窓口につながります。
相談したら負け、事を大きくしたくないから泣き寝入り、は事業者側の思うツボです!
こんな小さな事で行政に相談するなんて?と思った方が大半だと思います。
でも考えてみてください。悪質な事業者は多くの消費者に不利益を与えて平気な気持ちでいます。
声を上げなくてストレスを溜め込むよりも、本来あるべき解決手段である消費者相談窓口を利用して、それがきっかけとなり、納得できない不利益は弾き返す生活習慣に変わるかもしれません。
まとめ
悪質な事業者は、あなたの本の小さなルーズな部分を狙って不利益を拡大していくのです。
必ずひとりで抱え込まないで、消費者相談窓口へ相談しましょう。
⚫︎作成:2024年1月15日
⚫︎文:能登健
⚫︎出典元:消費者庁、国民生活センター
⚫︎画像:ぱくたそ