【支払停止の抗弁権】 分割支払いでは、契約前の説明と購入後の実態が違ったり、契約後の説明が変わった場合は、分割支払途中でも支払停止が可能な場合があります

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 消費者が信販会社などを利用して、分割支払いで商品を購入契約し、消費者へ商品が納入された後に、商品の内容が契約前の説明と異なっていたり、不良品、誤作動などの問題が発生した場合、販売店と製造メーカーのどちらに問題を交渉すれば良いかわからない時があります。

 販売店は製造メーカーから納入されたものを、販売しているだけになりますが、直接関わりのあるのは販売店です。
 ですが、販売店は商品の問題などは、製造メーカーに対応を依頼します。
 問題が発生している間も、消費者は支払いは継続しているものの、購入した商品の問題に納得できません。

 代表的な例では、自動車や家電製品などの高額商品や、エステなどの高額な役務提供があります。
 この場合の消費者は、信販会社へ購入代金の分割支払いを継続しており、クレジット会社が消費者を信用調査した上で、販売会社へ販売の許可を出します。

 このように購入者である消費者と販売店と信販会社の3者間契約の場合で、商品やサービストラブルがあった場合は、信販会社に「問題が解決されるまでお金を支払わない」と主張する「支払停止の抗弁権」を権利行使することが可能な場合があります。

 割賦販売法に定める「支払停止の抗弁権」です。これは、消費者が販売会社と結ぶ売買契約(又は役務提供契約)上の問題を理由として、信販会社への支払いを一時的に拒むことができる権利です。


 信販会社に支払停止の抗弁を申し出ることができる売買契約(又は役務提供契約)上の問題には、以下のようなものがあります。

商品(権利又は役務)及び商品(権利又は役務)の販売(提供)の条件となっている役務(商品又は役務)に起因する事由

  • 見本・カタログ等と現物が相違した場合
  • 商品(権利又は役務)の引き渡し(提供)がない場合
  • 商品(権利又は役務)の引き渡し(提供)が遅延した場合
  • 商品(権利又は役務)に瑕疵がある場合
  • 商品(権利又は役務)の販売(提供)の条件となっている役務(商品又は権利)の履行がない場合

売買契約(役務提供契約)に起因する事由

  • 強迫・強要の場合
  • 詐欺の場合
  • 錯誤による意思表示の場合

※「支払停止の抗弁」は、割賦販売法に定める信用購入あっせん、ローン提携販売の方法で購入(受領)した際に申し出ることができますが、以下の場合は申し出ることができません。

  1. 支払期間が2月未満の取引のとき
  2. 割賦販売法の適用除外となっている権利の契約のとき
  3. 商品・権利・役務の購入(受領)が、購入者にとって商行為(連鎖販売個人契約および業務提供誘引販売個人契約に係るものを除く)になるとき
  4. クレジットカード又は個別方式のクレジットを利用した契約であって、支払総額が4万円未満のとき
  5. クレジットカードで支払方式がリボルビングの場合やローン提携販売の場合には、商品・役務・権利の現金価格が3万8千円未満のとき

販売店への、問題の積極的な解決に向けての交渉への努力義務

 購入者である消費者は、信販会社に対抗する際は、該当代金の支払停止を信販会社に申し出ます。
 その際は予め販売業者と交渉を行うよう努力するようにとされています。

支払停止の抗弁権を行使した場合の、金融事故登録の禁止

 信販会社は、対抗申請書類に基づいて必要な調査を行わなければならず、購入者は調査に協力しなければなりません。
 調査の結果、対抗理由が存在したならば請求停止・銀行引落し返金をしなければなりません。
 信販会社は十分な調査を行うことなく、請求を継続したり、個人信用情報機関への金融事故情報登録を行ってはなりません。

支払停止の抗弁は契約の解除はなく、問題解決後に支払いが再開

 「支払停止の抗弁権」は、契約を解除できる権利ではありません。
 販売会社との間で生じている問題が解決するまで、信販会社への支払いを停止する権利です。
 問題が解決した場合には、支払いが再開されることになります。


筆者の体験談

 世界的に販売台数がトップで、売上高も日本企業でトップレベルの自動車メーカーの人気車種であったハイブリッドカーの品質の信頼性を信用して、販売店にて新車で購入しました。

 納車当初から、メーカー純正カーナビゲーションシステムが、始動後に必ずオーディオのチャンネルが変更されて、スマートフォンと連携するアプリが起動していました。
 当時のスマートフォン連携は発展途上段階であり、特段使用するものではありませんでした。
 販売店に問い合わせ、販売店は2回カーナビゲーションシステムの交換をしました。それでも再発するため、メーカーからの回答は、「現象が再現できなく、連携しているスマートフォンに問題がある」と、筆者の主張した現実と相反するものでした。
 そこで、手持ちの複数のスマートフォンを全て利用して、①車内の場合、②車外10m離れた場合、③車内で電源オフの場合、④車外10m離れ電源オフの場合の試験レポートを作成して、販売店に提出しました。

 その直後に販売店から連絡があり、メーカーのナビゲーションシステムを開発製造を依頼しているサプライヤーから担当のエンジニアを派遣して、現物確認するので立ち会ってほしいと連絡がありました。

 サプライヤーのエンジニアと不具合事象の再現に立ち会いをしましたが、それでも数ヶ月間経過しても対応方針が決まらなかったので、信販会社へ「支払い停止の抗弁」を相談することになりました。

 信販会社には、「契約前の資料では記載がない、再現性のある不具合」で、試験レポートの書面を提出済みである旨を伝えると、「支払い停止の抗弁権」に該当する可能性があるとアドバイスされ、信販会社はすぐに販売店へ問題の解決されていない事を確認するために連絡をされました。
 その直後に、販売店から筆者にすぐに連絡があり、今までこのような手段をされる方はいなく、大変なことになった認識である事を連絡してきました。要は「支払停止の抗弁権」を権利行使しないでほしいのと、したところで対応が変わるものではない旨の連絡でした。

 それに対して、筆者は本来あるべき姿ではないので、当然の事を検討しているだけだから、対応が変わらない事で困るのは結果的に筆者だけでなく販売店も該当する。本来あるべき姿から目を背けるのであれば、痛み分けはしていただかならばならない旨を回答しました。

 その後は販売店からメーカーへ連絡して改善要求をしたと思われます。
 3ヶ月後にナビゲーションシステムとスマートフォンと連携して、ソフトウェアアップデートする事で不具合は改善されました。改善により問題は解決したので、結局は「支払い停止の抗弁権」を権利行使をすることなく、問題は解決しましたが、問題が解決するまでの1年余りの期間は、新車の納車が遅れたようなもので、完全には納得いかないものでした。
 また、ナビゲーションシステムの不具合やソフトウェアアップデートなどの改善情報などの公式案内は全くありませんでした。

結果的に、個人が本件に関して誰にも相談せずに、世界一の会社組織に対して、設計上の不具合を見つけて、事実のみを提示して、粘り強く対応する事で改善させることができました。


まとめ

 高額な買い物で購入者(消費者)側に全く落ち度がないトラブルに巻き込まれたとしても、このように団体や政治家などの有力者の力を借りなく、個人が世界最大の組織相手に対して、アプローチさえ間違えなければ、改善させる事は可能なのです。

分割で支払いをしている商品やサービスが説明内容と異なる問題が発生した場合は、第三者である信販会社に事実をそのまま説明して、仲裁に入ってもらうことで、購入者である消費者の負担が減り、販売店側での努力義務が発生するため、ほとんどの場合は問題が解決します。

 問題があるにもかかわらず、放置する事は結果的に泣き寝入りと一緒です。
 これは法律で規定されていますので、必ず購入者である消費者の権利を行使しましょう。

参考サイト

  • 作成:令和2年9月18日
  • 文:能登 健
  • 出典元:日本クレジット協会
  • 絵:いらすとや
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表、ファイナンシャル・プランナー、グラフィック・デザイナー、エンジニアリング・アドバイザー、システムアドミニストレーター、相続診断士、お客様対応専門員(CAP)、消費者啓発活動ボランティア、課題解決型・組織横断型地域ボランティア