【契約の取消】 法改正で不当な契約の取消や無効の範囲が拡大
“消費者と事業者”では、持っている情報の質・量や交渉力に圧倒的な格差があります。
消費者の利益を守るために、平成12年に“消費者契約法”ができました。“平成28年・30年の改正(令和元年6月15日施行)”で、“取り消し、無効の範囲が拡大”します。
※消費者が事業者(個人事業者、法人、団体、自治体、政府など)との契約(消費者契約)であれば、あらゆる契約が対象です。
不当な勧誘での契約は、後から“取り消し”が可能
うそを言われた(不実告知)
【不実告知の例】
消費者Aがスマートフォンなどの契約の見直しで通信会社の店舗に訪れた際に、国内通話無料と表示があり、店舗スタッフBから「全ての国内通話が無料になる」と説明を受けて契約変更をした。
後に消費者Aが請求明細にて、通話料金が発生している事に気付き確認したところ、実際は無料となるの通話対象は通話開始から5分間未満であり、5分間以上通話すると通話料金が従来通り加算されており、店舗スタッフBの契約時の説明と異なっており困惑した。
不利になることを言われなかった(不利益事実の不告知)※平成30年の改正で範囲が拡大
【不利益事実の不告知の例】
消費者Cがスマートフォンなどの契約の見直しで、通信会社の店舗に訪れた際、店舗スタッフDから、特定の時間帯によって通信制御で通信速度が極端にが低下して、消費者の利用上不便が予見される事を説明されずに、大容量のプラン変更を勧められ契約した。
実際に利用したところ、消費者Cがよく利用する時間帯には通信速度が極端に低下して、通信サービスに不便を感じストレスを抱えるようになった。
店舗スタッフDは、通信速度の低下時間帯がある事を消費者Cに、一般的な日常生活のサイクルの利用に際して、不利な条件を明確に説明していない。
必ず値上がりすると言われた等(断定的判断の提供)
【断定的表現の提供】
消費者Eは、絵画の展覧会に行った際に、販売員Fから「絵画の複製原画を購入しませんか」と勧誘を受けた。
消費者Eは当初は展示会のつもりで来ていただけで購入するつもりはなかったが、販売員Fの話を聞くことにした。
販売員Fは、消費者Eを別室へ案内して、個別に勧誘を続けた。
「自宅に絵画のある生活は素敵ですよ」、「この絵画の複製版画はあまり作られていないので、とても貴重です。絵画を投資目的で購入されている方も多数おられます。この画家の複製原画は人気なので値上がりします。今回の価格で提供できるのは本日が最後になります。」と、“とても貴重”、“値上がりする”などの断定的表現を用いて、消費者Eの購入契約の動機の形成に働きかけた。
この事業者が複製版画を何度も販売していたことに不審に思い、別の事業者にて鑑定を依頼したところ、貴重でもなく値上がりの見込みもない複製原画であることがわかった。消費者Eは複製原画の高額な支払いが残った。
通常の量を著しく超える物の購入を勧誘された(過量契約)
【過量契約の例】
消費者Gは、スマートフォンなどの契約の見直しで、通信会社の店舗にて、店舗スタッフHからスマートフォンの通信量が極端に多くないにも関わらず、ホームルーターの契約を「本体費用は実質無料で、利用料金だけの支払いなのでお得で、通信量が無制限になる」と説明を受けて、進められるがままに契約させられた。
店舗スタッフHは、消費者Gの実際の利用状況を確認せず、一方的に不必要な量の契約をしたため、消費者Gは従来と同程度の通信量に対して、年間の支払い額が高額になった。
お願いしても帰ってくれない(不退去)
帰りたいのに帰してくれない(退去妨害)
【退去妨害の例】
消費者Jは、路上勧誘スタッフKから不意打ち的に路上で「絵画に興味がありませんか」と呼び止められ、絵画が展示されている施設に案内(キャッチセールス)された。
消費者Jは、スタッフKに購入するほど絵画に興味がない旨を伝えても、何度もローンでの購入を進められ、購入をするまで長時間にわたって帰してくれなかったので、消費者Jは仕方がなくスタッフKが提案した60回払いローンでの購入契約をして、帰してもらった。
平成30年の改正で“取り消し可能になった事項”
就職セミナー商法等(不安をあおる告知)
【不安をあおる告知の例】
会社員である消費者Lは、スマートフォンなどの契約に見直しに通信会社の店舗へ行った際に店舗スタッフMから、「今後は、何か起きた時に自宅で従来より高速になった通信機器を使って、通信量が多く使える方が良い」と不安をあおられ、勧められるがまま、最も通信量が多い契約を締結させられた。
消費者Lはさらに店舗スタッフMから、「本体は無料で、通信は無制限だから何かあっても通信量の心配ありません。」とホームルーターの契約を締結された。
ホームルーターが無料なのは本体費用だけで利用料金は加算され、その後はその消費者Lは不安と引き換えに毎月高額な請求をされるようになったが、年間の請求額の支払いが高額になり滞りなく支払いする事に不安とストレスを感じるようになった。
デート商法等(好意の感情の不当な利用)
高齢者等が不安をあおられる(判断力の低下の不当な利用)
【判断力の低下の不当な利用の例】
高齢の消費者Nは、スマートフォンなどの契約に見直しに通信会社の店舗へ行った際、店舗スタッフPから「何か起きた時に通信量が多い方が良い」と不安をあおられ、勧められるがまま、最も通信量が多い契約を締結させられた。
さらに、店舗スタッフPは消費者Nに対して、有料のオプション契約は、「オプションは、月末までに解約していただければ費用はかかりませんので、付けておきますね。」と言われるがままに消費者Kが判断できず契約をした。
店舗スタッフPは高齢の消費者Nが、長時間の説明で、判断力が低下している事を利用して、「タブレットは無料だから、あった方が何かと便利」と全く必要のないタブレットなどの契約を締結された。
後に、消費者Nはオプションの解約方法の説明をが理解できなくて解約できず、タブレットが無料なのは本体費用の数ヶ月間だけで、タブレットの通信費用は請求され、その後は利用状況から逸脱した、高額な請求をされるようになった。
高齢の消費者Nは、言葉だけはなんとなく聞いた事がある話には知らないと言えない性格で、実際はその分野の知識や判断力に乏しく、消費者Nの子供夫婦の料金見直しの際まで、長期間にわたって全く気が付かなかった。
霊感商法等(霊感等による知見を用いた告知)
契約前なのに強引に代金を請求される等(契約締結前に債務の内容の実施等)
消費者の利益を不当に害する契約条項(内容)は、“無効”となります。
① 損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意又は過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項は無効。
- 消費者に損害が発生しても、事業者は賠償しないと定められた場合が問題になります。
- 事業者が責任の有無や限度を“自ら決定する条項は無効となります。※平成30年の改正で対象を追加
② 消費者はどんな場合もキャンセルできないとする条項は無効。
- 消費者の解除権放棄させる条項は無効。
- 事業者が消費者の解除権の有無を“自ら決定する条項は無効”となります。
③ 成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項
- 事業者に対し、消費者が“後見開始等の審判を受けたことのみを理由とする解除権”を付与する条項は無効となります。※平成30年の改正で新設
④ 平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項
- キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分や、遅延損害金につき年利14.6%を超える部分についての条項は無効。
- 解約したらキャンセル料を支払うという条項のみならず、解約時に支払い済みの金銭を返さない場合がなどが問題となります。
⑤ 消費者の利益を一方的に害する条項
- 任意規定の適用による場合と比べ、消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、信義的に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効。
【例】
掃除機購入の際に、注文していない健康食品が、商品の掃除機に同封されていて自宅に届けられて場合に、消費者が健康食品を継続購入しない旨の明確な意思表示を事業者側に通知連絡しない限り、健康食品を継続的に購入するとみなす旨の条項。
事業者と消費者の努力
事業者の努力義務として明確化されてます
- 契約条項に定めるに当たって、その“解釈について疑義が生じない”明確で平易なものになるよう配慮すること。
- 勧誘に際し、契約の目的物の性質に応じ、個々の消費者の知識・経験を考慮してした上で、必要な情報を提供することが明確化されました。
消費者の努力義務
消費者の努力義務として、消費者契約を締結するに際し、事業者から提供された情報を活用し、消費者契約の内容について理解することが求められます。
まとめ
令和元年6月15日から消費者契約法が改正され、該当の消費者トラブルが発生しても、取り消しや無効にする事が可能になりました。
しかしながら、多くの事業者は法改正の内容を遵守せず、消費者トラブルになるような事を避けているどころか、手段をいとわず契約を締結する事を当然と考えて、改める様子はありません。
事業者側は、騙すことを含めた売り上げ目標を予算化している現状があります。そうような事業者は騙す手段を計画的に実施しているのです。残念ながら、騙されやすい事が成立するのが現状なのです。
騙されないためには、あらゆる契約に疑いをもって確認する消費者にならなければなりません。
事業者側が騙す目的で仕掛けた落とし穴に、消費者は気がつくように人生を歩んでいかなければなりません。でなければ収入に占める騙された支払いの割合が増加するのです。なぜ働いているのかわからなくなってきます。
騙された支払いのために余分に働いてるのであれば、泣き寝入りせずにしっかりと現実と向き合い、自分自身をの本来の生活を取り戻すために解決していくべきです。
騙すような反社会的な手法には、決して利益を与えてはいけません。
日常生活において、この契約は何かおかしいな…と思ったら、消費者ホットライン:局番なしの188(イヤヤ)へ相談してください。
事業者から消費者に提供された情報や契約内容に疑いを持ち、調べ理解することが努力義務となっています。
今後は無関心では済まされません。
情報リテラシーをおざなりにしていると、経済的に搾取(さくしゅ)されるのが常態化し、生活に悪影響が発生・拡大します。
騙された時は自分自身を責めずに、必ず消費者ホットラインへ相談してください。
もっと知りたい方は消費者庁のウェブサイトへ「消費者庁 消費者契約法」で検索してください。ひとりでも消費者被害が減ることを願っております。
参考リンク
- 消費者庁のサイト:
https://www.caa.go.jp/
- 作成:令和元年5月28日
- 更新:令和2年8月19日
- 文:能登健
- 出典元:消費者庁