【固定電話回線の悪質な被害】 アナログ回線に戻す契約のはずがサポート契約に

1283

「通信は目に見えない」を悪用した悪質な勧誘

 電話を含め、通信サービスは目に見えないサービスで、知識レベルによって悪質な勧誘にあい、想定外の被害額が発生する場合があります。

この手口の特徴

 過去に、一般の固定電話の回線でインターネットを利用するために、光回線に変更する工事をして、インターネットを利用していた時期があり、スマートフォンの普及や家族の移動などで、固定電話の光回線のインターネットを利用する機会が減っている消費者が、ターゲットになっています。

 大手通信会社のサポートセンターを名乗る事業者から「電話を光回線からアナログ回線に戻さないか」と電話があった。
 今は誰もインターネットを使っていないので、ちょうどいいと思い契約した。
 しかしその後、毎月サポート料金として約3千円引き落とされていることが分かり、確認すると1年縛りでサポート契約をしているとのことだった。
 解約を申し出ると、今解約するとキャンセル料が発生すると言われた。
(70歳代 女性)

出典元:国民生活センター

 通信サービスの事業を監督する総務省、消費者への注意環境情報をする国民生活センター、大手通信会社の名を語られているNTT東日本、NTT西日本から、それぞれ注意喚起情報が発表されています。

国民生活センターからの「ひとこと助言」

  • 大手通信会社の名前を出していても、実際は関係のない事業者が勧誘をしているケースがあります。勧誘を受けた事業者名をしっかり確認しましょう。
     
  • 知らないうちに、回線の切り替えには必要のないサービスの契約を結んでいるケースもあります。勧誘を受けた際は、費用やサービス内容、解約条件などをよく確認し、必要ないと思ったらきっぱり断りましょう。
     
  • 光回線をアナログ回線に戻す場合には、現在の契約先や回線事業者に問い合わせましょう。
     
  • 困ったときは、すぐにお住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。

 このインターネットが利用できる光回線を、従来のメタル(金属)線であるアナログ回線に戻す背景像を考えた場合、次の条件が揃っている立場にある悪質勧誘業者が考えられます。

  1. 通信業界にある程度の知識がある
     
  2. NTT東西の光回線の契約者の契約状況が、わかる立場にある光コラボレーション事業者で、電話勧誘を中心としている関連業者が関係している
     
  3. 専門の業者並に光回線からアナログ回線への戻す、NTTへの手配に慣れている
     
  4. 集金方法も同じように誘導し案内している

 以上のことから、通信事業の内部の悪質業者が関わっていると推測します。

みなさん、心当たりはありませんか?

アンケートは勧誘のための手段

 携帯電話の販売代理店の店内で待っている時間に、アンケートに回答していませんか?
 その回答内容は、顧客情報に紐付いて管理されています。

 アンケートを断ると、なぜか対応ができなくなると説明されて、アンケートに回答せざる得ない強引な販売代理店が多いことをご存知ですか?

 この「アナログ戻し」に勧誘され被害にあった消費者は、2024年までに光回線に変更する勧誘が必ずあります。このように悪質業者が公序良俗に反した目的にも個人情報が管理・収集されているのです。

「アナログ戻し」とは

 光回線をアナログ回線に戻すことを、業界用語では「アナログ戻し」と呼んでいます。一般の消費者には、何のことかさっぱりわかりません。

 令和6年(2024年)には、固定電話がIP網(インターネット・プロトコル・ネットワーク)に変わりますが、消費者側の負担や手続きは必要ありません。

 従来のアナログ回線の場合は、発信する相手との距離ごとに通話料金が変わります。
 ですので、「アナログ回線に戻した方が安くなる」というのは、一概に断言できません。「光回線に切り替えると、距離に関係なく通話料金が一律になり、安くなる」とセールストークがあったことを覚えている方もおられるかもしれません。

言葉の整理

 「アナログ回線に戻す」いうよりも、「インターネットを利用する以前の電話だけの回線に戻す」の方が、みなさまには馴染みがあるかもしれません。

光回線の方が安い場合も

通話料金は本当に安くなるの?

 光回線の光電話の場合は、インターネットのネットワークを利用するため、距離に関係なく国内は一律料金になっています。

 アナログ回線の場合は、従来のサービスを維持するために、今では希少な電話交換機や長距離回線などの専用設備が必要になります。
 NTT東西では、以前の時代のアナログ回線を継続提供するためには、一般消費者宅内工事は必要とせずに、宅外設備を変更してアナログ回線と同じ利用環境を提供するために、総力を上げて全国の光回線などのIP網化に整備中です。
 したがって、NTT東西が直接関与していることは、考えにくいと考察します。

悪質な通信事業者が存在する現実

 一般消費者向けの通信サービス事業は、令和になってから事業者間の競争が加速して、低価格化が進み、関連事業者の利益が減少して、事業として継続が厳しくなってきています。

総務省の携帯電話の販売代理店への調査結果

 通信サービス事業の複雑さや、関連している事業者が多いことから、一般の消費者にはよくわからない事が多く、適切な説明を受けて消費者の理解の上で、契約を締結が出来ていない状況が多いことが総務省の調査で明らかになりました。

 この悪質な勧誘は、電気通信事業法の「適合性の原則」の違反であり、禁止行為です。

 総務省の調査で携帯電話の販売代理店のスタッフの40%が、利用者の知識レベルやニーズを踏まえた説明をせずに、高額な大容量プランを勧誘した事があると回答し、さらに高額なスマートフォンや相場価格の数倍の価格でSDカードや、高額なオプションを含めると、かなりの割合になると調査報告で明らかになっています。

通信業界は闇が深く、搾取が多い

 この消費者をあざむいた行為の要因は、代理店へ事業を委託している通信業界ならではのビジネスモデルがあります。全ての販売代理店が悪質な対応をしていたわけではありませんが、法改正で規制が度々されるほど、消費者被害が多く、悪質な事業者が中には継続している事実があります。

 通信分野など公共性の高いサービスを提供している社会的な責任感よりも、利益重視の経営方針で、手元にある顧客リストに、違法な勧誘が成功した消費者をリスト化し、片っ端から他の業者を装って、「アナログ戻し」の勧誘をしているかもしれません。

お人好しでは、悪質勧誘をされ続ける

 総務省は、国民に向けて、通信サービスの販売代理店の約半数が明確な違反行為をした事があると公表したことは、遠回しに「通信サービスの関連事業者の勧誘を信用してはいけません!お人好しではいけません!」と伝えているのです。

 本来であれば違反した販売代理店を行政処分すべきですが、違反している割合が多すぎるため、国民への影響が大きくなります。そのため現在は、違反行為の通報窓口を設置して、段階的に取り締まりを強化しています。

電話だけで手続きを済ませない!
  •  怪しい勧誘などあれば、必ず消費者ホットライン(局番なしの188)へ相談しましょう。
  •  最寄りの消費生活センターの消費生活相談員につながり、全国の似た事案から適切なアドバイスを受けられます。

まとめ

 今回の悪質業者は、請求書や連絡先、NTTへの手配記録、契約書などで、明らかになるのは早いと思いますが、処分される覚悟で違反行為をしていることから、消費者の顧客リストなどを転売したりと、次の被害の拡大につながる恐れがあります。

 このような通信事業者の不適切な行為がマスメディアで強く報じられないのか?それは通信事業者は巨大すぎるスポンサーであり、取材を試みる記者はいないからです。残念ながら、例え週刊誌でもいてません。

 違反行為をしていた全ての販売代理店などが、方針を変えて真面目にビジネスをするかというと、よほどお人好しな人でなければ、詐欺まがいの消費者をあざむく勧誘行為で、簡単に稼ぐことを覚えた人間は戻らないことは容易にわかります。

 事業者は同じ業務を一日中反復継続的にしている専門家(プロ)で、情報量や交渉力が消費者に比べて圧倒的に優位です。この格差を悪用した場合は、消費者契約法で取消可能な場合があります。

怪しいと思ったらすぐに相談を!
  •  怪しい勧誘などがあれば、必ず消費者ホットライン(局番なしの188)へ相談しましょう。
  •  最寄りの消費生活センターなどの、トラブル専門家の消費生活相談員に無料相談やアドバイスを受けられます

参考リンク

  • 作成:令和3年11月9日
  • 文:能登 健
  • 出典元:国民生活センター、総務省、NTT東日本、NTT西日本
  • 画像:いらすとや、ぱくたそ
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    消費者問題と、デジタル分野に詳しい、大阪で活躍するファイナンシャルプランナー
     
    主にスマホ料金相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
    不当な契約があれば解約の上、行政の消費者相談窓口を案内している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。

    社会課題を解決するために、問題と向き合い深掘りし、組織を横断して、時には政府に意見し、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)