労働者も使用者も安心して、副業・兼業に取り組む前に

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 副業・兼業をはじめる前に、労務に関するリテラシーを向上させ、トラブルのないように努めましょう。

副業・兼業とは?

 副業・兼業を行うということは、二つ以上の仕事を掛け持つことをここでは想定しています。

  副業・兼業は、企業に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)、自ら起業して事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任といった形で行うものなど、さまざま な形態があります。

副業・兼業にはどんなメリットと留意点があるの?

 副業・兼業を行うことのメリットは、働く方の状況によってさまざまありますが、たとえば、以下のようなものが考えられます。

  • 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、主体的にキャリア形成ができる。
  • 既に行っている仕事の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求できる。
  • 所得が増加する。

 メリットの一方で、注意をしなければいけない点もあり、たとえば、以下のようなものが考えられます。

  • 就業時間が長くなる可能性があるため、自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。
  • 副業・兼業によって既に行っている仕事に支障が生じないようにすること、既に行っている仕事と副業・兼業それぞれで知り得た業務上の秘密情報を漏らさないことなどに留意する必要がある。
  • 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合に、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である。

お互いに安心して 副業・兼業に取り組むために

労働者の方へ

働く方の状況はさまざまですが、副業・兼業を行うことが、主体的なキャリア形成や自己実現につながることも考えられます。

一方、就業時間が長くなる可能性もあることから、長時間労働に起因して健康が阻害 されることがないよう、ご自身でも「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に留意した取組をお願いいたします。

厚生労働省 労働者の皆さまへ 企業も労働者も安心して 副業・兼業に取り組むために

使用者の方へ

多様な働き方への期待が高まっており、労働者の希望に応じて副業・兼業を行える環境を整備することが求められています。

長時間労働になり、労働者の健康が阻害されることがないよう、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を踏まえた取組の実施をお願いいたします。

厚生労働省 企業(事業主、労務担当者)の皆さまへ 企業も労働者も安心して 副業・兼業に取り組むために

使用者の安全配慮義務

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働契約法 第5条

※「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれます。

安全配慮義務には、主に下記の項目が含まれます。

  • 職場環境の安全管理
  • 労働時間管理(通算労働時間の管理、深夜労働、時間外労働、休憩、休日など)
  • 過重労働の防止
  • 長時間労働の防止
  • 健康診断、メンタルヘルス診断
  • ハラスメント対策など

労働時間の通算管理

 通算労働時間であっても法定労働時間を超えて労働させて(して)はいけません。必ず使用者と労働者が互いに相談しましょう。

労働時間

 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
 

期間の単位1日1週間
法定労働時間の上限8時間40時間
法定労働時間(通算労働時間も含む)

休憩時間

 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。

労働時間6時間超8時間超
休憩時間45分以上1時間以上
法定休憩時間(通算労働時間を含む)

休日

 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

期間単位毎週連続4週間
法定休日1日以上4日以上
法定休日(通算労働日数を含む)

時間外労働の上限

 原則として、通算した時間外労働は、月45時間、年360時間を超えてはなりません。
※法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合は、事前に労働基準監督署への届けなどが必要です。

期間の単位1ヶ月間1年間
時間外労働の上限45時間360時間
時間外労働の上限(通算労働時間を含む)

労働災害保険

 使用者は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働者を1人でも雇用していれば、労災保険の加入手続を行う必要があります。

 通勤中、業務中に発生した事故に起因する傷病は、事業主の災害補償責任を担保(リスクヘッジ)するものです。
 副業・兼業をする労働者への労災保険給付額は、本業と副業・兼業などの全就業先の賃金を算定基礎とすることになっています。

 つまり、副業・兼業の労働にあたり、労災保険に加入していない場合は、本業の労災保険の補償にならないだけではなく健康保険が使えないため、事業主の災害補償することになります。ですので休業補償、障害補償、遺族補償等で大きなトラブルに発展する可能性があります。
 労働者も使用者も法令遵守し最低限のリスクヘッジは確認しておきましょう。


まとめ

 副業・兼業をはじめるにあたり、使用者と労働者は、互いに法定ルールを遵守し、無理のない範囲でトラブルが発生しないようにしましょう。

 わからないことや疑問に思ったことは、必ず労働局などは問い合わせて調べましょう。個別の労働契約や組織内ルールなどよりも、法令が優先されます。

参考リンク

  • 作成:令和5年2月17日
  • 文:能登 健
  • 出典元:厚生労働省
  • 画像:いらすとや
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    大阪で活躍する消費者問題と、デジタル分野に詳しいファイナンシャルプランナー
     
    主にスマホ乗換相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。
    課題を解決するために、問題を深掘りし、組織を横断して、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)