【退職勧奨】会社(経営者)から退職を提案された時の相談先

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 長引くコロナ禍や、社会構造の変化、ケガや病気での療養による長期休暇後など、会社側(経営者や人事担当者、上司など)から退職を提案される場合があります。

 それも冗談だと思って、返事をしなかったら催促されたりと、会社は経営が最優先なので、10年以上勤続していた人材であっても、時には貴重な経営資源である人材を手放す判断をする場合もあります。

 特にケガや大病をして復職時の就労に配慮が必要になる場合は、会社側はその労働者のためだけに特別な設備投資が必要になることから、退職させようと残酷な判断をします。

 労働者が就業規則に違反しているわけでもなく、会社の都合で退職を提案されることは、「退職勧奨」に該当します。

労働基準法が最低限の基準を下回る契約や就業規則は無効!

 労働者に直接関係のある、雇用契約書や就業規則などは、就職時や転職時など新たな職場で提示されるものです。位置付けは次の通りになっています。

  • 雇用契約書とは…使用者が労働者を雇用する場合に、使用者と労働者が雇用の条件について個別に定める契約書
  • 就業規則とは…使用者と労働者全体が、事業所における労働に関する取り決めを包括的にルール化したもの

 雇用契約書と就業規則は、双方とも使用者と労働者が雇用関係を結ぶ際に、労働するための諸条件や職場内で守らなければいけないルール等を定めている非常に重要なものとして位置づけられています。
 しかし、ご質問のように雇用契約書と就業規則の内容が、全く異なるという場合があります。
 このような場合、雇用契約書と就業規則のどちらのルールに従うべきか悩まれる方がおられますが、優先される労働基準法では次のように示されています。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
この場合において、無効となった部分は就業規則で定める基準による。

労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)

 つまり、それぞれの効力の優先順位をまとめると次のとおりとなります。

労働関係ルールの優先順位

労働基準法 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約

例えば、労働契約(雇用条件契約書)で、研修期間中の場合や、年齢で条件が記載されている場合でも、労働基準法で定められている最低限の要件(最低賃金など)を満足しなければ、事業者は法律に違反していることになります。

 労働基準法は労働条件の最低基準を定めた法律ですから、就業規則の内容は、労働基準法の内容よりも上回ったものでなければなりませんので労働基準法よりも下回った労働条件を定めた就業規則はその部分は無効となり、労働基準法が適用されることになります。

 次に個別の労働契約と就業規則の関係ですが、個別の労働契約の内容が就業規則で定めている基準よりも有利な場合は、個別の労働契約が適用され、就業規則より不利な場合は就業規則が最低基準として適用されます。

ゼロリスクより、次を考え不利益を最小限に!

 労働者が経営者など、立場が相反する相手の考え方を正すことは簡単ではありません。 
 立場の異なる利害関係がからむ場合は、ほぼ変えられないと諦めてください。
 当事者間で離さずに、ハローワークなどの行政の専門家へ、この「退職勧奨」の事実があったことを公共職業安定所(ハローワーク)に説明すれば、退職時の離職理由に「自己都合」ではなく「会社都合」になるので、失業給付金の給付開始までの3ヶ月の待機期間がなく、さらに給付終了までの全体の期間が大きく変わってきます。

退職理由と給付日数の関係

1. 特定受給資格者及び一部の特定理由離職者(※補足1)(3. 就職困難者を除く)

※補足1 特定理由離職者のうち「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方については、受給資格に係る離職の日が2009年3月31日から2022年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。

被保険者で
あった期間
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上
35歳未満
90日120日
(90日(補足2))
180日210日240日
35歳以上
45歳未満
90日150日
(90日(補足2))
180日240日270日
45歳以上
60歳未満
90日180日240日270日330日
60歳以上
65歳未満
90日150日180日210日240日
※補足2 受給資格に係る離職日が2017年3月31日以前の場合の日数

2. 1及び3以外の離職者

被保険者で
あった期間
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
全年齢90日90日120日150日

3. 就職困難者

被保険者で
あった期間
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
45歳未満150日300日300日300日300日
45歳以上
60歳未満
150日360日360日360日360日

【重要】退職勧奨による退職の失業給付の扱い(特定理由離職者の抜粋)

 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)

1. 失業等給付(基本手当)の受給資格を得るには、通常、被保険者期間が12か月以上(離職以前2年間) 必要ですが、被保険者期間が 12 か月以上(離職以前 2 年間)なくても 6 か月(離職以前1年間)以上あれば受給資格を得ることができます。

2. 失業等給付(基本手当)の所定給付日数が手厚くなる場合があります(注)。

(注) 受給資格に係る離職理由、年齢、被保険者であった期間(加入期間)に基づき基本手当の所定給付日数が決定されるこ とになります。特定受給資格者又は特定理由離職者に該当する場合でも、被保険者であった期間(加入期間)が短い場合など、それ以外の通常の離職者と所定給付日数が変わらないことがあります。

労働契約の終了に関するルール

1. 解雇

 使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)。解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要です。

 例えば、解雇の理由として、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか、最終的には裁判所において判断されます。
 また、一定の場合については法律で解雇が禁止されています。(以下、主なもの)

<労働基準法> 

  • 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇 
  • 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇 
  • 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

<労働組合法> 

  • 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

<男女雇用機会均等法> 

  • 労働者の性別を理由とする解雇 
  • 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇

<育児・介護休業法> 

  • 労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

 使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。 

 そして、合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。 

 予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。
 例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要があります。(労働基準法第20条)。 

 さらに、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。

2. 期間の定めがある場合

 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、あらかじめ使用者と労働者が合意して契約期間を定めたのですから、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされています(労働契約法第17条)。そして、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。 

 また、有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」<厚生労働省告示>)。 

 さらに、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります。(労働契約法第19条)

3. 整理解雇

 使用者が、不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます。
 これは使用者側の事情による解雇ですから、次の事項に照らして整理解雇が有効かどうか厳しく判断されます。

  • 人員削減の必要性 
    人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
  • 解雇回避の努力 
    配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
  • 人選の合理性 
    整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
  • 解雇手続の妥当性 
    労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

4. 退職勧奨について

 解雇と間違えやすいものに退職勧奨があります。退職勧奨とは、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。 

 労働者が自由意思により、退職勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。 

 なお、退職勧奨に応じて退職した場合には、自己都合による退職とはなりません。

実際によくあるケース

 実際は解雇ではなく、たいていは退職勧奨という事前に提案があり、いきなり退職が決まるわけではありません。

 ですが、解雇は使用者(経営者)がいつでも自由に行え、使用者の優越的な地位から迫られると、ほとんどの労働者は労務関連法の知識などの対抗手段を持ち合わせていません。

 この状態では、使用者(経営者)と労働者との間で、信頼関係が崩壊しており、労働者は会社の事を考えるとゆううつになり、職場に居づらくなります。そして自己都合で早く退職してしまうことになるのです。それが会社側の狙いなのです。

退職までにそうならないためには…

行政に相談すれば、状況が一転します

 労働を監督する行政は厚生労働省であり、都道府県の労働局です。労働局には、会社など事業者を監督する「労働基準監督署」と、労働者が失業した事を伝えるために離職票届ける失業給付の手続きや再就職をサポートする「公共職業安定所(ハローワーク)」があります。

 この場合、離職票に記載される退職理由がポイントになってきますので、退職後の生活のことも考えるために在職中に予めハローワークへ相談されるようお勧めします。
 担当の職員から退職の経緯や退職理由などについて的確なアドバイスがいただけますので、当分の間の計画がわかります。

 行政である労働局に相談したことで、行政からアドバイスを受けている事を会社側に伝えると、行政の判断に従わざるを得ません。

 会社側は行政の指導とまではいかないにしても、相談による方向修正を余儀なくされた場合は、退職前後に陰口や後ろ指をさされるのは、社会的には会社側になるわけです。
 ですから積極的に相談される事をお勧めします。

 これはあくまで、退職前で退職理由が会社側から納得いかない方向へ進みそうな場合に、速やかにしてください。
※退職後に退職理由をくつがえす事は場合によりありますが、たいていは多くの時間のかかる話になります。

少し冷静に考えられる内容でも、当事者になれば慌てます!

 このような生活に直結している労務の知識は、義務教育や会社や組織に入ってから、研修などで教わる事はなく、自己解決による積極的な発想の転換が必要になります。

 解雇や退職勧奨などがあると、何も考える事ができなくなり、会社側にいいように引き継ぎなどに最後まで利用されて、気がつけば既に退職していて、泣き寝入りしている方が大勢おられます。

 中には、弁護士に相談すればなんて事を知ったかぶりを平気で助言する方がおられますが、労務に関しては社会保険労務士が専門家で業務独占資格です。時間は限られていますので、よくわからない方とは距離を置きましょう。

 ですが、残念ながら現実問題として、会社側と労働者のお互いの想いが異なることから、対立関係で争う話だと思い込み、弁護士や裁判など途方もないキーワードが浮かび、お金と時間がかかることから、あきらめて泣き寝入りするのです。

 そもそも、労務に関しては厚生労働省で近くの労働局が担当行政になりますので、まず本来あるべき姿を確認することが大切です。
 会社側は行政や法制度に従わざるを得ません。現在、会社側が違反した場合は、政府からの補助金の打ち切りや、金融機関からの融資の評価が悪くなり、経営継続が厳しくなるのです。
 そこを理解して、あなたの意見ではなく、あなたの退職の経緯や状況を労働局へ相談しましょう。


まとめ

 わからないことや疑問に思った事は、そのまま放置すると、後の人生を妥協することになります。
 時には、自分だけの知識や力ではどうにもならない時もあります。必ず関係行政への相談をしましょう。

 活用できる制度や資源(スマホでの情報収集など)を工夫して、自己の不利益にならないようにしましょう。

参考リンク

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  • 作成:令和3年8月17日
  • 文:能登健
  • 出典元:厚生労働省
  • 画像:ばくたそ、いらすとや
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表、ファイナンシャル・プランナー、グラフィック・デザイナー、エンジニアリング・アドバイザー、システムアドミニストレーター、相続診断士、お客様対応専門員(CAP)、消費者啓発活動ボランティア、課題解決型・組織横断型地域ボランティア