住宅ローンの契約時の注意と、その後の対応

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住宅ローンとは

 住宅ローンは、住宅を購入するために数年では返済できない高額な融資を10年を超えたローンで申し込むものです。

 住宅ローンには、税制上の優遇措置や、金融機関から貸出条件として利用者にお願いされる条件があります。

 優遇措置は、住宅ローンの残金に応じて所得税の納付額が大きく控除される事です。

 住宅ローンのことを調べなくて、検討もしていない人がよく勘違いされるのは、社会保険料控除などと同じ所得控除であると思い込んでいる事です。
 住宅ローン控除は、所得控除ではなく税額控除です。

住宅ローンのメリット(税制優遇)

 住宅ローンの減税措置は、所得税を控除された納付額である税金から控除(マイナス)されるので、かなり大きなメリットがあります。

 住宅ローン減税には期限があり、購入後から10年などその時の経済や社会情勢に応じて変化しますが、契約時の税制が適応されます。

 例えば、仮に初年度は3,000万円の住宅ローンの借り入れの返済元金が残っているとします。

 住宅ローン控除なしで弾き出された納税額から、3,000万円の住宅ローンの返済元金の1%である30%円が納税額からマイナスされます。

 つまり、30万円分の納税額は返却されてくるのです。この税金が返却されることを「還付」といわれる行政用語で「還付金詐欺」で有名ですよね。

 毎年、30万円弱が戻ってくるとなると、家具が充実したり、10年目あたりになると修理費用に充てたりできてとても助かります。

住宅ローンの優遇措置を受けるには条件があります

 住宅ローンは原則的に、契約した年または完成して入居可能になった年の年末までに、その住宅ローンで購入した住宅へ、住民票を移動しなければなりません。
 住宅ローンの利用者が、住居として利用するために必ず転居しなければなりません。

 住宅ローンは金融機関が契約者が住み暮らすためのものとして、金利を優遇しさらに最長35年の長期間の返済期間で融資を行なっています。

 これが、住むわけでなく他人に貸すための住宅であれば、住宅ローンの優遇金利はありませんし、税制優遇もありません。
 住宅を賃貸に貸し出した場合は、不動産賃貸業となり事業として利用しているため、契約違反になります。

 あくまで契約して返済する人が暮らす住宅である事が条件なのです。

不動産登記簿の所有権と抵当権

 住宅ローンで住宅を取得した場合は、不動産登記簿の表題部分の所有権は契約者になっています。ですが、権利の項目には、契約者が取得後に住宅ローンを融資を受けたために、「抵当権」が設定されます。
 不動産登記簿の抵当権には、金融機関名と契約日と融資元金が記載されています。

 所有権を変更する場合や、転勤などで賃貸貸しする場合は、必ず抵当権を設定している債権者である金融機関に事前に協議して、合意しなければなりません。

 住宅ローンの返済が終了すれば、抵当権を解除してもらうことは可能です。

 契約の際に、「抵当権」が「根抵当権」になっていたら、話が違うと抗議しましょう。
 金融機関側の悪質な契約違反です。

 適切な呼び方かわかりませんが、銀行とは所詮は金貸しです。
 相手があまり金融リテラシーや契約に得意でない事につけ込み、悪知恵を働かせて小細工でワナを仕掛けてくる時もまれにあります。

住宅ローンの返済免除条件

 住宅ローンは返済期間が長期間にわたることから、返済をする債務者側に万が一のことがあって、返済できなくなった場合に備えて、団体信用生命保険に必ず加入します。
 団体信用生命保険の目的は、返済者が返済完了までに亡くなった場合に、生命保険として残りの返済額が団体信用生命保険から支払われて、金融機関が返済完了と判断して、事実上の返済免除となるのです。

住宅ローンの契約にまつわるトラブル

 ここでのトラブルは、金融機関は事業者として金融のプロ、一方で住宅ローンを利用する消費者は一生に一度くらいの契約なので、素人です。このような事業者と消費者とでは、情報などさまざまな格差があり、契約は慎重に検討しならなくてはなりません。

 国民生活センターの統計では、毎年の消費者トラブルとして相談件数は少ないですが、金額が他に比べて高額なため、合計金額はそれなりに大きくなっています。つまりトラブルがないとは言い切れないのです。

夫婦共働きの共有名義での契約誘導

 共働きだから所有権を夫婦共有名義にして、返済も夫婦2人がする契約にしてしまうと、後々トラブルが発生する場合があります。

 時々あるのが、夫婦のどちらかが単独で返済するつもりで金融機関と話を進めていたはずが、金融機関で住宅ローンの契約の際に、契約書に配偶者の氏名などが記載する箇所があり、尋ねると「一応書いておいてください」とあいまいな返事しかせず、共有名義で夫婦2人が返済になるように契約させる場合が少なくなりません。

 ほとんどの日本人が契約書を細かく読んで理解しないため、このようなトラブルが多いのが社会構造的な現状です。金融リテラシーの向上以前に、契約などの重要さを理解しておく必要があります。

 また、早く返済するために共働きの共有名義の契約にするつもりが、金融機関や不動産会社からの提案で、夫婦合わせてより多い融資額の物件に誘導して、当初の返済計画から逸脱する場合があります。

離婚の元配偶者との所有権と返済トラブル

 例えば、結婚してまもなく住宅を購入するために住宅ローンを共働きの2人で返済していたとします。

 夫婦とはいえ、配偶者は他人で異なる環境で育ち価値観も異なります。35年間返済期間の間に気持ちが変わらな保証は当事者たちも最初はわかりません。誰しもが離婚する前提で結婚することはありません。

 離婚に至った場合は、当初の返済条件が変わったことになるので、金融機関への報告が必要です。

 離婚後も遅滞なく返済をしていかなければなりませんが、離婚した相手との共有名義の住宅は、夫婦のどちらかが住むことになった場合、所有権が共有であるため、固定資産税の支払い義務が生じます。

 離婚で信頼関係が破綻していて、元配偶者と関わりが無くなってる場合でも、住宅ローン返済と固定資産税を支払う義務があります。

 返済が終わらないと抵当権が設定されてますので、所有権は変更できません。

 離婚した元配偶者とお金の難しい話をするのは、考えただけで気分のいいものではありません

 離婚時に売却して返済するなど、夫婦が当初に描いていたイメージとはかけ離れたものになります。

夫婦共働きで2人返済期間中に、どちらかの配偶者が亡くなった場合

 夫婦どちらかが亡くなった場合は、全額免除にはならず、亡くなった方の融資枠分の団体信用生命保険から一括されますので、残された側は今まで通りに支払う義務が残ります。

 ちなみに団信にはランクがあり、利率は上昇しますがガンや三大疾病になった場合にも免除になる契約も存在します。この場合は若く健康な時に契約しなくてはいけませんね。

 所有権は夫婦間の相続になるので、大きな控除があり、よほどほどの高額ではない限り相続税の配偶者相続控除で課税対象とはならず非課税となります。

 残された側は亡くなった配偶者の保険金などで前倒し返済などをされると、しばらく心が落ち着くまでゆっくりとできるでしょう。

収入が減少して毎月の返済できる金額を交渉したい場合

 収入が減少や、子どもの学費、家族の傷病や介護などで、住宅ローンの返済が継続的に困難になる場合は、必ず早めに返済計画について金融機関へ相談しましょう。滞納した場合は契約違反になりますので、一括返済を求められる場合があります。

 住宅ローンの融資額の返済計画を見直す事を「リスケ」(リ・スケジュール)と呼び、金融機関と協議して毎月の返済額を減らして返済期間を再設定します。必ず事前に相談するようにしましょう。

住宅ローン返済計画の見直し

 住宅ローンは融資申し込み当初の当事者の状態に対して、融資条件(主に利率など)が設定されています。

 例えば、ゼロ金利時代前に住宅ローンを契約している場合は、交渉次第で金利を下げれる可能性があります。

 さらに、返済開始から10年経過し、その間に遅延なく返済が継続できていたならば、返済していた実績で再評価され、優遇される可能性があります。

 他にも給与振込口座や年金受取口座を、住宅ローンの融資を受けた金融機関の支店に変更する代わりに金利の交渉も可能な場合もあります。

お金の問題に向き合うように

 この先、住宅ローン金利が上昇に転じるのか、低金利が継続するのかは、こればかりは誰にもわかりません。

 住宅ローンは金額が大きいだけにヤマをはるのはリスクが高いです。

 高い金利の時の住宅ローンの借り換え程度なら、メリットがありますが、ここ10年以内であればあまり借り換えは効果がゼロではありませんが多くの効果は見込めません。

 人生の大きな買い物である返済期間が長い住宅ローンは、もともとは終身雇用時代に契約者の収入が年功序列的に増加して、子供の学費も補える前提で設計されているもので、現在の社会の変化や経済情勢を反映していません。

 親世代の発想や以前の習慣をそのままスライドさせて、将来の事を深く考えずに安易に住宅ローンを利用すると、後で手放すなんてことが今後は増えてくる可能性があります。


まとめ

 住宅ローンの返済期間である35年間は、子育てが始まり、そして子供が独立してまだ返済期間があるくらい長いものです。仮に60才に完済する場合には25歳に住宅ローンを契約しなければなりません。

 晩婚化が進む日本の社会で、住宅ローンを契約する時期も遅くなり、養育費との両立が難しくなってきています。

 自分自身の今後ライブステージの変化をイメージして、無理のないプランを考え、日々目標を持ち前向きに努力しながら生きていく方だけが上手くいきます。

 一方で、考える事を先延ばしする理由を仕事などの忙しさに責任転嫁して、生活のペースをコントロールできない方は、住宅ローンの利用にはあまり向いていません。

 住宅ローンを利用する場合は、今後のライフステージがある程度イメージできて、契約を理解して返済する覚悟が出来てから利用するようにしましょう。

参考リンク

  • 作成:令和4年9月1日
  • 文:能登 健
  • 出典元:国民生活センター、金融庁、金融広報中央委員会
  • 画像:いらすとや、ぱくたそ
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表、ファイナンシャル・プランナー、グラフィック・デザイナー、エンジニアリング・アドバイザー、システムアドミニストレーター、相続診断協会:相続診断士、日本産業協会:お客様対応専門員(CAP)、自治体登録型:消費者啓発活動ボランティア、消費者庁:食品ロス削減推進サポーター、課題解決型・組織横断型地域ボランティア・政策提案型ボランティア