【解説】 60歳以上は、通話し放題でUQがおトクは本当?

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 TVCMや家電量販店、UQモバイルの店頭で広告が掲示され、勧誘される60歳以上の方向けの「シニア割」の内容を調べてみました。

 結論は、複雑な条件が複数あり、指定スマートフォン購入と指定プラン加入で、通常より月額1,000円が安くなります。しかし、スマートフォン本体は2機種のいずれかを購入しなければならず、新たなスマートフォン本体の支払いが増え、現在ご利用中のiPhoneを安く利用することはできません。

「シニア割」の料金プランや条件の解説

 UQモバイルは高速通信量が3GB/月で1,980円、通話オプションとして、1,700円で国内通話かけ放題が選択可能です。
 この「シニア割」の条件として、UQモバイル指定の一般的ではない高齢者向けのスマートフォンの2機種から選択して購入し利用しなければなりません。指定のスマートフォンの購入と利用を条件に、国内通話かけ放題の通話オプションの1,700円を1,000円を継続して割引くものでした。さらにご家族がUQモバイルを利用していることが前提です。

高齢者の消費者に優しく単純明快な錯誤(勘違い)のないプランとは、言い難い複雑な条件です。

UQモバイルの「シニア割」の条件一覧

  • プラン契約者が60才以上
  • ご家族が既にUQモバイルを利用中または利用開始
  • 国内通話かけ放題のプラン加入
  • 指定された高齢者向けのスマートフォンの2機種のいずれかを購入し回線契約して利用する
  • 指定されたスマートフォン以外は対象外で、ご利用中の使い慣れたiPhoneなどは契約不可

シニア割は新たな指定する一般的では無いスマートフォンを購入利用が条件で、サポート手段が限定される

 そのスマートフォンは、一般的ではなく高齢者をターゲットとした独自仕様のものであり、iPhoneのように操作が一貫性があり、操作方法がわからない場合に気軽に周囲に質問して解決するものでもなく、またiPhoneのようにアップルサポートに問い合わせて解決することもできません

 操作方法や通信の不具合など、わからないことは、購入店またはUQモバイルに問い合わせる事になり、自己解決できなく来店したことにつけこんで、さらに別の商品やサービスの勧誘をされて、利用者が判断できないまま、電気やガスまで、勧誘された通りに契約してしまう、高齢者の消費者被害の温床になっている事が懸念されます。
 また、後に自由にiPhoneなどに機種変更したくても、1,000円/月(年額12,000円)支払いが増えるので、UQモバイルに繋ぎ止める施策となってますので、一旦契約すると解約する決断が難しくなります。

高齢者の消費者被害が懸念

 月額1,000円安くなる代わりに、誰にも使い方を質問できない一般的ではないスマートフォンに拘束されて、販売店や事業者は何度も来店させることを狙っており、不当な勧誘のターゲットになる恐れがあります。

 そのリスクをどう考えるのかは個人の判断ですが、高齢者が消費者被害の兆候を察知した場合は、周囲の方が消費者ホットラインへ誘導する事が消費者基本計画で定められています

ご利用中の使い慣れたシニアに人気のiPhoneは、「シニア割」の対象外!

 ご利用中のiPhoneをSIMロック解除して、通常通り3GB/月が1,980円、通話オプションの国内通話かけ放題を1,700円に加入して、使い慣れたiPhoneをご利用されるのが、トラブルから回避する方法としては理想的な契約です。

iPhoneは所有者が変わってもアップルサポートが利用でき、いつもと調子が異なる場合などに気軽にメーカーに直接問い合わせができることは、自己解決できない方にとっては大きな安心材料になります。

 2019年10月に電気通信事業法が改正になり、通信サービスと本体販売は分離しなければなりません。このUQモバイルのシニア割は、黒に近いグレーです。
 通信サービスを提供する会社から、スマートフォンを購入すると、割高または、何かの拘束条件が付いており、望ましくないのですが、現場では是正されていないのが現状です。

今回の定額プラン比較の根拠

 ちなみに比較対象をワイモバイルとしなかった理由は、高速通信量を使い切った後は、ほぼ使えない厳しい速度制限が発生して、通信量を追加購入し、定額ではなく高額になる場合が多いためです。
 UQモバイルの3GB/月1,980円のプランでは、300kbpsに速度低下しますが、利用目的を限定すると、かろうじて利用可能で、さらに任意に節約モードと高速モードを変更することが可能で、待機中は節約モードにすることで、高速通信量を節約可能です。
 そのため、ワイモバイルは定額プランと同様に表示することは誤認する恐れがあるので、除外して比較対象外としています。


まとめ

 UQモバイルの高齢者に限定したプラン「シニア割」は、一見安くは見えますが、当初の6ヶ月間は通話オプションが全額割引され、その後は1,000円の割引になり、自由にスマートフォンを選べない事業者側が決めた消費者に選択する自由の権利を侵害している、少し複雑なプランです。
 また、おトクの根拠の条件が全て文字が小さくて、本当に高齢者に配慮してるとは到底思えません。
 ですが、UQモバイルは、一人ひとりが生活スタイルにあったプランを選択でき、大手3社より安く利用できることには間違いありません。特にプランRは大手3社には無い好条件です
 おとり広告は法制度で禁止されていますが、「シニア割」はおとりにみせて、結果的に使い慣れたiPhoneを使うために普通のプランを勧める口実ではないかと考察しています。

 なぜ、あのようにテレビで大々的に広告が可能なのか? それはマスコミはスポンサーの味方ですから、大手のスポンサーに対して不利になることは、なるべく報道しないように忖度します。
 何が消費者にとって、確かな情報なのかを試される時代なのです。

  • 作成:令和2年9月27日
  • 文:能登 健
  • 出典元:UQモバイル
  • 画像:ぱくたそ
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    大阪で活躍する消費者問題と、デジタル分野に詳しいファイナンシャルプランナー
     
    主にスマホ乗換相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。
    課題を解決するために、問題を深掘りし、組織を横断して、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)