ダークパターンに注意! 身近なデザインにひそむ、人をあざむくデザイン。

20
※画像をクリックすると資料のPDFが開きます。
※このPDF資料のは高解像度で印刷可能です。

■この記事のポイント

1. 消費者教育の現状と課題
 日本では義務教育に消費者教育が導入されているものの、実効性に乏しい。例えば、クーリングオフ制度を利用するには手続きが複雑であり、多くの人が泣き寝入りしてしまう現状がある。また、消費者被害を受けた人が自己防衛的に事実を歪めて伝えることが、法的対策の不明瞭さを生む一因となっている。

2. 高等教育と社会人研修の必要性
 消費者問題は高度な知識を要するため、本来は大学や社会人向けに体系的な研修が必要である。消費者被害は可処分所得の搾取であり、これを防ぐことは生活の質を向上させる。そのため、国が社会人向けの消費者教育を強化し、研修には日当補償を設けるべきだと指摘している。

3. ダークパターンとその影響
 ダークパターン(消費者を欺くデザイン)は、利益重視の事業者が行動経済学を悪用して作り出すものであり、消費者は常に注意を払う必要がある。しかし、こうした手口について具体的な事例や応用可能な対策を提供する啓発活動は不足している。

4. 現代社会と消費者リテラシーの格差
 日本社会は長年、消費者問題を先送りしてきたため、対応がますます困難になっている。今後は人工知能(AI)がダークパターンの回避を支援する可能性があるが、それを活用できる人とできない人の間で格差が広がることが懸念される。

結論
 消費者教育の強化とデジタルリテラシーの向上が急務であり、個々の意識改革が求められる。ダークパターンの脅威は今後も続くため、消費者自身が知識を深め、主体的に行動することが重要である。

ダークパターン?なんだそれ?

 私たちの暮らす世界である資本主義経済社会での、行動経済学の悪用で、消費者問題の根幹ともいえる「ダークパターン」の初歩的な概要をまとめ紹介します。
※2025年2月21日に開催された「くらしクリエートフォーラム2025 in 関西」にて、消費者ラボから報告された内容です。テーマや資料の作成は私がしました。

※クリックすると9分弱のYouTube動画資料が閲覧できます。

消費者を取り巻く環境と、相反する利益を追求する事業者側

効果的に実施できてない消費者教育

 日本社会や消費者トラブルを俯瞰(ふかん)してみると、義務教育から消費者教育の導入は進んでいますが、表明的であり実効性が伴わない違和感があります。

 例えば、学生が特定商取引法を理解してクーリングオフ制度を使うには、消費者行政に相談し、クーリングオフ制度の対象であることを確認して、期間内に定められた様式にてクーリングオフ制度の意思表示を事業者側に通知して、事業者との返金交渉をすることは、かなりハードルが高く感じます。
 実際には社会人であっても、クーリングオフ制度の活用は、ハードルが高く感じて泣き寝入りする方が少なくないと思います。

 そして、人々は消費者被害を取り戻すことができなくて、自分自身が失敗したわけではないと、都合の良いように自己暗示をかけて、少し事実と異なる内容を人に話します。これが怪しさや話の違和感を、聞く人になんとなく与えるのです。正確な法的対策が人によって変わり、よくわからなくなる要因になっています。

可処分所得の無駄な支出などの現実に向き合えば、自ずと消費者被害対策が見えてくる

 そもそも消費者問題は、大学などの高等教育にて学ぶ、高度で幅広い教養が求められる内容です。
 本来あるべき姿として、大学や大学院、社会人に対して国が体系的に研修を実施して、社会人に対しては研修期間は日当補償をする義務があると考えます。なぜならば、消費者被害は人々の暮らしの中の可処分所得を搾取しているからです。
 したがって、消費者問題の知識を深めることは、人が暮らしていく上で必要な知識で、自分自身の人権を守ることになるのです。

 暮らしの主体となることが未経験、高校生以下の学生や児童に消費者教育を実施したところで、フードロスやゴミの分別などの初歩程度の目の前の作業しか、理解は難しいものがあります。

 正確な情報源として、個別具体的な消費者トラブルの事例は国民生活センターが告知していますが、一般的な考え方や手口の説明の抽象化で応用対策が可能な柔軟性を含んでいる啓発内容を見たことがありません。

ダークパターンを知ることは、辛い現実と向き合うこと

 このダークパターンは、行動経済学を悪用する方針の事業者がモラルよりも利益重視で投資して「人をあざむくデザイン」を時間と労力をかけて慎重に作り続けています。もちろん、モラルを優先して社会を騙すことは禁止している事業者も多くあります。

 今回は暮らしに身近にあるダークパターンについて、初歩的な知識と種類を上げています。

 ダークパターンに対策するには、消費者はあらゆる商品やサービスのデザインや設計にダークパターンが組み込まれていることを、常に疑いの目をもち、よく考えて自分自身で意思決定をすることが大切です。


まとめ

 ダークパターンを知ることは、世の中には甘えやまやかしは通用せず、厳しい現実社会と向き合うことになります。日本全体が暮らし(プライベート)で、先送りして逃避していたことで、これから対応するのがとても難易度が高くなっています。それでも多くの事業者は手を緩めることなくダークパターンで迫ってきます。

 幸いにも時代が追いついて、汎用型の人工知能がスマートフォンに搭載され、アシスタントのような人工知能にビッグデータから最も確からしい事を確認しながらダークパターンを回避することも可能になりました。

 ですが、デジタルリテラシーや暮らしのリテラシーを自己研鑽され応用力があり助かる方と、他人事にして助からない方との格差が、今後はますます広がる事でしょう。

参考リンク

  • 出典元の書籍:『ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策』(ハリー・ブリヌル, 長谷川 敦士(監修), 髙瀨 みどり 著)
  • 出典元のPodcast:ゆるコンピュータ科学ラジオ 詐欺的なサイトを鑑賞して楽しもう!!【インターネット地獄めぐり】#145
  • 作成:2025年2月22日
  • 文責:能登 健
  • 出典元
    書籍:『ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策』(ハリー・ブリヌル, 長谷川 敦士(監修), 髙瀨 みどり 著)
    Podcast:ゆるコンピュータ科学ラジオ 詐欺的なサイトを鑑賞して楽しもう!!【インターネット地獄めぐり】#145
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    消費者トラブルと、デジタル分野に詳しい、大阪で活躍するファイナンシャルプランナー/消費生活コンサルタント
     
    主にスマホ料金相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
    不当な契約があれば解約の上、行政の消費者相談窓口を案内している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。

    社会課題を解決するために、問題と向き合い深掘りし、組織を横断して、時には政府に意見し、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、消費生活コンサルタント(一般財団法人 日本消費者協会)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)