【業務停止命令】 電気やガスの電話勧誘や訪問勧誘に注意!

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一方的な値引き等の説明で、勧誘行為が問題になった電気やガス

 電力とガスの小売自由化で、大手の関連会社から新規参入の名前の知らない会社が多く参入しており、消費者と大手電力会社の中間業者になることで利益を確保して事業を拡大しています。

 その契約に至る実態は、訪問勧誘や電話勧誘が多く、不意打ちを狙って来ます。
 本来であれば電気やガスは、必ず過去一年分の使用量を比較して、価格的なメリットを確認の上で提案しなければなりません。
 ですが、新規契約の数ヶ月間は基本料金無料などのインパクトがあるキャンペーンなどで、本当に消費者にとってメリットがあるかを比較検討させないようにしている小売事業者は少なくありません。

 例え大手電力会社の子会社であっても、顧客の獲得競争になっており、契約のために不適切な勧誘が増加していることは事実です。

 勧誘に際して、大手電力会社の子会社や関連会社などを名乗って、実は違うかったという話もあります。
 今回、消費者庁から業務停止命令を受けた事業者は、実際に大手電力会社の100%子会社でした。
 その委託を受けた事業者が事実と異なった説明をして、多くの消費者が信用してしまい、被害が拡大しました。

 現在、多くの大手電力会社の子会社や、大手通信会社、大手石油小売、大手ガス会社などが電力小売事業をしています。
 その大手企業の名称を合法的に語ることができることで、消費者は事実と異なる説明をされるとは思っていません。ですが、実際には以前より高額になったなどの被害が多く発生しています。

電気やガスの乗り換えには見積もりなどの合理的な判断材料が必要

 電気やガスは、各世帯ごとに家族構成や生活スタイル、使用している家電製品の使用電力などが、各世帯ごとに異なるため、すべての世帯に共通して、この事業者に乗り換えればお得になる料金体系はありません。
 必ず直近あ1年分の電気とガスの使用量と支払額と、新たに乗り換えた場合の支払い額を比較する必要があります。

 消費者の合理的な比較を阻害しているのは、契約当初は大幅な値引きをして、見積額で下がったように見せる会社もあります。

 当初の値引きは短期限定として、除外して見積もりしなければ2年目以降が以前より高額になる場合が多くあります。

大手企業に関連があっても事実ではない説明をする事も

 このように、大手企業が電力小売事業をしていても、単純に説明を鵜呑みにはできないことがわかります。
 電力小売事業は自由化になり勧誘契約だけを委託事業者が実施して、契約数に応じて報酬が支払われます。その報酬は消費者が支払っている電気料金に含まれています。

 委託事業者は電力小売り事業者からの報酬を増やすために、電話勧誘や訪問販売、複合施設内での事務所を持たないキャッチセールスなど、消費者に不意打ち的で厳しい規制がある特定商取引法の手段で不適切な行為が散見されています。

 消費者は、普段から電気やガスの直近1年分の詳細を把握したり、資料を持ち歩いていません。電気やガスの乗り換えは、不意打ちにはそぐわないのですが、利益を得るために大手企業が経済力や交渉力、情報量で圧倒的な力を使って、消費者から契約を締結しようと手段や相手を選ばず勧誘活動を継続しています。

増加する不適切勧誘(電話勧誘、訪問販売、キャッチセールス)

 電話勧誘や訪問販売、複合施設内の事務所を構えていない場所でのキャッチセールスなど、消費者が意図しない不意打ち的なタイミングで、継続利用のサービスなどの勧誘してくることが多く、消費者トラブルの要因になっています。

 このような消費者とって不意打ち的な取引類型は、勧誘方法や手段、契約方法、クーリング・オフの書面交付や期間が設定されています。
 悪質業者による消費者トラブルが多く、民法ではなく特別法の特定商取引法で厳しく細かく規制されています。

消費者庁の業務停止命令の事例

電話勧誘販売業者【東京電力エナジーパートナー株式会社】に対する行政処分について

消費者庁は、東京電力ホールディングス株式会社の100%子会社で、電気及びガスの小売供給を提供する東京電力エナジーパートナー株式会社(本店:東京都中央区)(以下「東電EP」といいます。)に対し、令和3年6月25日、特定商取引法第23条第1項の規定に基づき、 令和3年6月26日から同年12月25日までの6か月間、電話勧誘販売に関する業務の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。

消費者庁 取引対策課 令和3年6月25日

違反行為の内容

勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的不明示)

 東電EPの委託先事業者であるYの担当者Zは、平成30年6月、消費者A に電話をかけ、Aに対し、「いつも、東京電力にて、電気のご利用ありがとう ございます。本日は、△△(具体的な地域の名称を告げている。)にてご契約 いただいております料金プランについてご連絡をいたしました。」と、あたかもAが契約中の電気小売供給契約における料金プランについての連絡のために電話したかのように説明した上で、本件ガス小売供給契約の締結について勧誘をするための電話であることを告げずに、「ただいま、お時間をいただいてよろしいでしょうか。」、「2,3分でございます。」と告げ、説明を続けてよいか確認してAにこれを承諾させると、おもむろに、「昨年より、東京電力でもガスをご利用いただけるようになりまして、電気とガスのお支払いを一緒 にしていただきますことで月々のお支払が大変お安くなりますので、皆様にご紹介をさせていただいております。ちなみに○○様(具体的な氏を告げている。 以下同じ。)のご自宅では、●●●●(役務の対価についての不実告知)及び(役務の対価についての事実不告知)における「ある特定の事業者」の名称。以下同じ。)様お使いでいらっしゃいますでしょうか。」などと告げて、本件ガス小売供給契約の締結についての勧誘を開始した。

役務の対価についての不実告知及び事実不告知

 東電EPの委託先事業者であるWの担当者Uは、令和元年11月、消費者Dに電話をかけ、Dに対し、「今回は、電気とガスのお話でして、○○様も去年 の11月頃ですね、東京電力から、電気とガスは●●●●さんにお切り替えされていらっしゃいますか。」、「私共の東京電力に戻ることで、電気もガスも、 両方ともお安くなるお客様が非常に多くいらっしゃいましたので、○○様のご自宅に、毎月、●●●●さんから、電気とガスの明細が、1枚で届いているかとは思うんですけれども」と告げた後、Dをして、Dが保管する、Dが契約中のある特定の事業者との契約に関する書類により、Dの電気及びガスの小売供給契約の締結先が当該特定の事業者であり、その契約中の料金プランが、電気についてはα(上記4(2)及び(3)の「ある特定の事業者」における、標準家庭向けの電気料金プラン。以下同じ。)、ガスについてはβであることを確認させると、続けて「現在ですね、全く、ガス代に対してですね、割引がないまま、1年以上ご利用のプランで」、「○○様が私共の東京電力に戻ることでですね、電気もガスも両方ともお安くなりまして。」、「最初の1年間は、 ガス代に対して、約8%の割引も入りますし、2年目以降もですね、ずーっと約3%の割引が入ります。あとあの、電気代も年間で1,200円、お得にご利用いただけます。」と、あたかも、東電EPと本件電気小売供給契約及び本 件ガス小売供給契約の両方をまとめて締結すれば、その電気料金が消費者が契約中の当該特定の事業者の電気料金と比較して一律に年間1,200円程度安くなるかのように告げた。※不実告知

 また、2回目に電話した担当者Tも、Dに対し、「お申込みいただきましたプランは、新しい料金プラン、スタンダードSと、とくとくガスのセットプランとなります。」、「今後は、電気もガスも、東京電力の契約に切り替わります。○○様のガス料金は、初年度約8%、2年目以降は約3%、電気は年間1,224円、お得にご利用いただけますので、よろしくお願いいたします。」と、 あたかも、東電EPと本件電気小売供給契約及び本件ガス小売供給契約の両方をまとめて締結すれば、その電気料金が消費者が契約中の当該特定の事業者の 電気料金と比較して一律に年間1,200円程度安くなるかのように告げた。※不実告知

 そして、U及びTは、以上のように、Dに対し、本件電気小売供給契約及び 本件ガス小売供給契約の両方をまとめて東電EPと締結すると、電気及びガス料金の総額が、Dが契約中の当該特定の事業者の電気及びガスの料金の総額よりも安くなる旨を強調して告げたのみで、実際には、電気の月間使用量が300kWhを超えると、東電EPの料金プランの電気及びガスの当該月の料金の総額の方が、消費者が契約中の当該特定の事業者の料金プランの電気及びガスの当該月の料金の総額よりも高くなることが一般的に起こることを告げなかった。※事実不告知

※とても生々しい内容ですが、この内容は業務停止命令に至った概要として、消費者庁が公表している情報です。

まとめ

 このように、一方的な勧誘を受けて、比較検討をしないで事業者任せで契約してしまうと、実際は説明された価格メリットが得られなかった場合が多く、消費者に不利益が発生します。

 当然、電力とガスは継続的に利用しますので、時間の経過とともに被害は驚くほど増大します。

 勧誘する事業者は、消費者に冷静に考える猶予を与えない事で、必ず安くなるとうたい文句を訴求してきますが、実際には各世帯の1年分の利用実態で見積もり比較検討しなければ判断できません。

勧誘されても即決せず、冷静に実態を比較検討しましょう。

 少しでも怪しく感じたら、一旦話を終わらせて、消費者ホットライン(局番なしの188)へ相談しましょう。

参考リンク

⚫︎消費者庁 特定商取引法ガイド
https://www.no-trouble.caa.go.jp

⚫︎消費者庁 電話勧誘販売業者【東京電力エナジーパートナー株式会社】に対する行政処分について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024736/

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  • 作成:令和3年7月1日
  • 文:能登健
  • 出典元:消費者庁
  • 画像:いらすとや、ぱくたそ
能登 健
  • 能登 健
  • オフィスまちかど 代表
    大阪で活躍する消費者問題と、デジタル分野に詳しいファイナンシャルプランナー
     
    主にスマホ乗換相談事業者として、消費者に寄り添った対応で、利用プランと支払い額の最適化を実施し、余分な支払いを削減している。
     
    化学プラント設備メーカー、産業用エンジンメーカーの商品開発(防災用発電設備)のプロジェクトリーダー・マネージャーなどを経て、現在に至る。
    課題を解決するために、問題を深掘りし、組織を横断して、さまざまな問題に対応し、解決へ導くことをライフワークとしている。
     
    ファイナンシャルプランナー(国家資格:FP技能士)、情報処理技術者試験 初級システムアドミニストレーター(国家試験)、相続診断士(相続診断協会)、お客様対応専門員(消費者庁後援)、色彩検定2級(文部科学省後援)
    デジタル推進委員(デジタル庁)、食品ロス削減推進サポーター(消費者庁)